[RISC-V技術ブログ連載第25回]Rustで作られたRTOSを試す③

RISC-V

1.はじめに

 前回は、Rustで記述された組込み向けOSであるTockの構築方法、構築手順についてご紹介し、QEMUを使ってTockの上でサンプルプログラムが動作する様子までお伝えしました。今回はいよいよSiFive RISC-Vが搭載されたHiFive1 RevBボード上でTockを実際に動作させる様子をお伝えします。

2.環境構築

 前回のRISC-V技術ブログ連載第24回でお伝えした開発環境を引き続き利用し、追加で必要となるハードウェアおよびソフトウェアを以下に示します。

2.1.用意するもの

 Tockを動作させるための環境構築を行う上で新たに用意したものを以下に挙げます。

  • ハードウェア
    HiFive1 RevBボード
    USBケーブル(Type-A – micro-B)
  • ソフトウェア
    Seggar J-Link Software
    Screen

2.2.J-Link Softwareのインストール

 HiFive1 RevBボードには、プログラムのダウンロードやJTAGデバッグを行うためにJ-Link OBと呼ばれるデバッグ用のチップが搭載されています。このチップを使うために専用のソフトウェアをインストールします。具体的なインストール方法については、SiFive社サイト(https://www.sifive.com/boards/hifive1-rev-b)にある「Getting Started Guide」の「6.1 Seggar J-Link OB Debugger Configuration」が参考になります。こちらに記載されている情報を参考にして、必要なソフトウェアのインストールと環境設定を行います。

2.3.Screenのインストール

 シリアルコンソール用に今回はScreenというツールを使います。以下のコマンドによりインストールします。

sudo apt-get screen

3.HiFive1 RevBボードによるTockの動作確認

 前回のRISC-V技術ブログ連載第24回ですでにHiFive1 RevBボード用のTockのビルドを行っているので、今回はいよいよこのTockをダウンロード、実行させていきます。HiFive1 RevBボードとPCとをUSBケーブルで接続後、以下の画像に示すように、VirtualBoxでUSBデバイスを利用できるようにしておきます。

VitrualBoxでのUSBデバイス利用のための設定

 

3.1.Tockのダウンロードと起動

 以下のコマンドにより、Tockをダウンロードします。

cd $HOME/tock/board/hifive1
make flash-jlink

 正常にダウンロードが完了すると、以下のようなメッセージが表示されます。

HiFive1 RevBボードへのTockダウンロード

 次に、先ほどダウンロードしたTockの起動を確認します。以下のコマンドを入力して、screen(シリアルターミナル)を起動します。

sudo screen /dev/ttyACM0 115200

 HiFive1 RevBボード上のリセットボタンを押下し、screen上に以下のように表示されたらTockの起動は成功です。

HiFive1 RevBボードでTockが起動

 前回の技術ブログでご紹介したように、TockにはC言語用ユーザーランドライブラリ(libtock-c)とRust用ユーザーランドライブラリ(libtock-rs)の2つがあり、それぞれにサンプルプログラムが用意されています。前回、QEMUを使ってlibtock-rsのサンプルプログラムを動作させたので、今回はlibtock-cのサンプルプログラムを動作させてみます。

3.2.サンプルプログラムのビルド

 libtock-cのサンプルプログラムをビルドする際、デフォルトの動作としてArm用のビルドが行われるようです。そのため、Arm用のクロスコンパイラがないとエラーとなってしまいます。以下のようにしてArm用のクロスコンパイラをインストールします。

sudo apt install gcc-arm-none-eabi

 さらに、RISC-V用にビルドを行う際は、サンプルプログラムのディレクトリで、”make RISCV=1”のように入力します。今回LEDが点滅するサンプルプログラム(blink)を動作させることとし、以下のように入力し、ビルドを行います。

cd $HOME/libtock-c/examples/blink
make RISCV=1

3.3.サンプルプログラムのダウンロードと実行

 tockloaderツールを使い、ビルドが完了したblinkをHiFive1 RevBボードにダウンロード、実行します。以下のコマンドを入力します。

tockloader install ./build/blink.tab

 サンプルプログラムのダウンロードが完了するまでしばらく待つと、以下のようにLEDが色を変えて点滅し始めます。

libtock-cのサンプルプログラム(blink)の実行結果1

 シリアルターミナルを使ってTock上のプロンプトで”list”コマンドを入力し、プロセスの状態を確認してみます。

libtock-cのサンプルプログラム(blink)の実行結果2

 このように、blinkが動作中であることが確認できました(※)。

 ※ screenを終了するには、[Ctrl]+[A]を押下後、[K]キーを押下、[Y]キーを押下します。

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は実際にRISC-Vが搭載されているSiFive社製HiFive1 RevBボードの上でRustで記述された組込み向けOSであるTockおよびサンプルプログラムを動作させる様子についてお伝えしました。Tockではまだサンプルプログラムのレパートリーや対応するボードのレパートリーも少ないようですが、開発は継続的に進められているようです。今後ますますRISC-Vのサポートが強化されることに期待したいところです。今回はご紹介できませんでしたが、FPGAボードであるArtyA7-100T用にSiFive社製RISC-VのE21コアを書き込み、その上でTockを動かすこともできるようです。機会があればその様子についても本技術ブログでご紹介できればと思います。

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