汎用フラッシュ・プログラマ
NETIMPRESS avant
近年のモノづくりの環境は、「変動性」・「不確実性」・「複雑性」が交じり合って予測が難しい時代を迎えております。開発や生産の現場では、IT化の普及とIOT・AI技術の進化で新たな製品や付加価値サービスが生まれています。
市場や消費者が求める製品価値は多様化し、多様性のあるものづくりが求められています。弊社では、お客様が安心して長期にご利用いただくために環境の変化に対応した製品を目指しています。
製品概要 (汎用・信頼性を継承、安全・高速化を強化したコンパクト製品)
NETIMPRESSシリーズは、開発・生産ライン・保守などの現場で、幅広くご利用を頂いているフラッシュ・オンボードプログラマです。
NETIMPRESS avantは、これまで5回のモデルチェンジを行い、既存製品のコンセプト・機能を継承し、更に機能・性能を強化した3世代目のプログラマ製品です。
フラッシュメモリが自動車のECU(電子制御ユニット)向けMCUのオンチップROMに採用され始めた頃に、ECU開発の制御ソフト開発現場から、各MCUに依存しない汎用のフラッシュプログラマ製品を要望されました。お客様のご要望により、汎用フラッシュプログラマ製品をリリースしました。ECU開発が進むにつれ、開発で検証したツールを生産ラインのプログラミング装置に採用したいというご要望をいただき、生産現場向けのプログラマーとして進化してきました。
開発・生産・保守の現場では、目的や用途(ソフトウェアのレビジョン、機種、グレード、仕向け地)に応じて、プログラミングされたECU製品のフラッシュを部分的に改変する手順があります。
NETIMPRESSシリーズの販売当初より、車載ネットワークのCAN通信経由でフラッシュメモリの特定領域をリプログラミングする機能に対応しております。NETIMPRESS avantでも継承しております。。
これまでの築き上げた信頼性と汎用化を更にブラッシュアップし、小型(手帳サイズ)で高速化・安全対策と機能・操作性を強化した製品がNETIMPRESS avantです。
【代表的な特徴】
- 開発・製造の現場ニーズに寄り添ったスタンドアロン環境(便利な簡単操作)
- 大容量SDカードの搭載によりオフライン環境でも、複数オブジェクトのプログラミングが可能
- ハンディながら拡張性を充実、製造現場との親和性を高めた確かな信頼性
- バーコードリーダ接続可(品種選択)、DIO-IF信号拡張(PLCからの実行制御、パトライトなどへ)
これまでの製造現場の設備品として培った実績から更にノイズ耐性を強化
(本体筐体内部のグランド強化、プローブケーブルの伝送路を差動化) - 設備の稼働率アップ、一つのプログラマ本体で二つのフラッシュメモリのプログラミング
- 2チャンネルのプローブケーブル接続インタフェースを標準装備、メイン/サブMCUの二つのプログラミング実行も1台で十分
- 更にダウンロード速度を高速化、タクトタイム短縮などの生産効率に貢献
- 本体の処理性能を向上させ、ホスト間の通信インターフェースはGigabit Ethernetに対応し、
ターゲットとの通信は最大40Mbpsのボーレートに追従
従来品と比較(PC通信時間を1/10以下に短縮、プログラミング時間を30%削減) - 汎用化の追求:プログラミングプロトコル仕様、ターゲット接続IFの接続仕様をソフト化
- 本体・プローブのハードウェアは共通化、マイコン固有に依存する仕様はソフトライセンス化
- 多彩なターゲットIFをサポート:SPI/JTAG/QSPI(PHX400)・CAN/CANFD(PHX410)
- プローブライセンス:ターゲット固有の通信インターフェース配線をロジックファームウェアに変換
CAN/CANFDのリプログラミング対応はオリジナルプロトコル(UCOP)公開しています
お客様がご利用のプロトコルに対応したカスタムの定義体の開発も受け賜わります - セキュリティ機能の強化:情報漏洩防止として保存ファイルの暗号化
- 本体に保存するオブジェクトファイルを暗号化し、ターゲットのフラシュメモリにプログラミングする直前に複合化します
現場の親和性を高めた拡張システム「生産設備にツナガル連携」
NETIMPRESSシリーズの「生産設備にツナガル連携」
生産ラインの電子部品基板を量産する上で、フラッシュプログラミング設備として高い稼働率を維持させるために、周辺生産設備との連携する機能を強化してきました。
稼働率を向上させるためには、現存の生産設備との親和性の「生産設備にツナガル連携」が重要となります。既存製品から更にプログラミング作業が現存設備に浸透する目的として、本体機能の拡張インタフェースの充実化を行っております。
これまでのNETIMPRESSシリーズで培った生産ラインの設備制御との協調・連携、データ活用は、拡張インタフェースの機能は継承しております。avant製品では、接続プローブ・Digital-I/Oの信号線数などを増設し、接続事故につながるACアダプタを廃止し電源回路を本体に内蔵しました。
「生産設備にツナガル連携」の接続展開イメージ図をご紹介します。
スタンドアロン環境でも、開発や製造の現場での活用範囲が広がります
開発・製造の現場でフラッシュメモリをプログラミング作業の要求は、さまざまな条件で複数回のプログラミングかできることです。現場においては、多機能なPCもファイルを選択し、プログラマへダウンロードするだけの装置です。ターゲットシステムのフラッシュにダウンロードすることがPCの目的ならば、avant単体でもPCと同様に複数オブジェクトのファイルを保存が可能です。
avantのスタンドアロン(オフライン)環境でも、現場の用途に応じてファイル選択し、プログラミングを複数回の利用することが可能です。
以下に、開発・製造現場の活用の一部をご紹介します。
【開発現場での活用シーン】
開発の山場となるシステムテスト・テスティングの現場で、フラッシュメモリのパラメータチューニング・複数オブジェクトを試験するシーンでは効果的なツールです。
予めに複数のオブジェクトファイルをavantのSDカードに保存すれば、スタンドアロン動作環境でも現場の試験用途に応じたファイルを選択し、複数オブジェクトのフラッシュプログラミングをすることが可能です。開発の現場において、評価対象のソフトウェアをプログラミング、テスティングの実行・測定検証の作業サイクルにavantが貢献いたします。
保存可能なメモリ容量は最大で32MBまでのSDカードが使用できます。
【製造現場での活用シーン】
生産ラインでは、製造する製品毎にオブジェクトファイルを指定し、プログラミング実行を行います。この作業は、avantならば製造を管理するPCに接続しなくてもスタンドアロン(オフライン)環境でもオンラインと同様な作業が可能です。
NETIMPRESSでは、スタンドアロン環境でも生産する製品毎にプログラミングを自動化する仕組みを備えています。プログラミング自動化には、avantの拡張機能のSDカード・QRコードリーダ・Digital I/Oを利用します。
予めにSDカードに保存しているファイルフォルダをQRコードに紐づけを行います。QRリーダで生産する製品に付与されているQRコードを読み取り、SDカードに保存したオブジェクトファイルを指定します。プログラマの動作シーケンスをスクリプトファイルに保存することで自動化が行えます。
スクリプトファイルに定義した動作シーケンスは、Digital I/Oの入力信号によってプログラミング実行し、実行結果をDigital I/O出力するなど、一連のプログラマ操作を定義することで自動化が実現できます。
スタンドアロン環境によるプログラミング作業の自動化(スクリプト実行の動作例)
NETIMPRESS avantは、スタンドアロンの環境下でもフォルダ選択やDigital I/Oを活用してプログラミング動作を自動化させることができます。NETIMPRESSでは、プログラミング動作シーケンスをスクリプトテキストに定義し、スクリプトファイルとして保存が可能です。
スクリプトが生成されたファイル実行は、バーコード・QRコードリーダやDigital I/O(ST)入力信号の状態を条件定義した結果により、「スクリプト選択」・「スクリプト実行」として利用することができます。
(スクリプトファイルの生成については、サポートページのAZ488を参照ください)
以下に、製造治具の基板フィクスチャーとNETIMPRESS avantを連動させたスクリプトファイル実行の例をご紹介します。
【スクリプトファイル実行によるプログラミングシーケンス】
準備 :スクリプトファイルを選択します(Digital IO ST端子で指定(セレクトSWが接続)
レディ:基板フィクスチャー上にPCB基板が搭載状態を検出(Digital DI 入力に基板搭載センサーが接続)
スタート:スタート・レバーが倒されてロック状態で開始状態(Digital DI入力にスタート・レバーが接続)
完了 :プログラムシーケンスのERP動作の確認 正常・異常の判定( ERP動作の結果をDigital DO出力)
稼働率アップ:二つのマイコンのプログラミングが1台で対応可能になりました
プログラマ製品をご利用頂いているお客様の生産ライン製造では、製品パーツのセット基板や混合製品に複数マイコンが実装された生産ラインが多く、プログラマを併用してご利用を頂いているケースを多く見受けられました。プログラマ設備単体としての生産性向上を図るために、avantでは本体1台でも2個のマイコン対応を可能とするために二つのプローブ接続インタフェースを標準仕様として装備しました。
これまでの製品ではプローブケーブルが1CH接続仕様のため、二つのマイコンをプログラミングするには2台のプログラマが必要でした。各プログラマのプローブケーブル配線は、電気的な衝突防止用に外付けの電磁リレーなどで配線の切り替えている現場もありました。ターゲットマイコンのプログラム環境は、プログラマ本体毎に構築設定および管理が必要となります。
avantでは、個々のプログラミング環境やプローブの切り替え作業は本体内部の設定を変更するだけです。このメリットを効果的に活用して頂くために、二つマイコンがPCBに実装されたユースケースの製品活用例を以下にご紹介させて頂きます。
多様性が高いデジタル・インスツルメントクラスタでは、制御マイコンとグラフィック制御SOCの多品種プログラミングを想定しました。
多くの品種展開対応には、PCオンラインでの活用もご紹介させて頂きます。
(オンライン活用では、リモートコントロールソフトウェアのページをご参照ください)
NETIMPRESS avantの製品仕様
●NETIMPRESS avant(AFX100)
フラッシュROM内蔵マイコン・マイコンの外部バスに接続されたフラッシュROMに高速プログラミングを行うための汎用型プログラマです。
【表示LED・操作SWとコネクタ】
<上面>
・LCD(液晶表示:定義体型名やアドレス表示などの各種情報を表示)
・Key(メンブレインスイッチ:スタンドアロン用の操作キー)
<前面>
・AC Inlet (ACケーブル用コネクタ)
・LAN Connector (Ethernet接続用)
・Ground Terminal(アース端子用)
・Power SW(本体電源SW)
<後面>
・SD Card Slot (専用SDカード用スロット)
・Target Connector 1/2(プローブ接続×2)
・DIO Connector (Digital I/O用)
・BCR Connector (バーコードリーダ用)
【基本仕様】
・HOSTインタフェース:Ethernet(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)
9-PORT HUBを内蔵
・保存環境 -5~50℃ ・動作温度 5~40℃
・外形寸法 160(L)×110(W) ×55(H)mm
・重量 750g
・電源 AC100-240V 50-60Hz
・消費電力 12w(0.25A)以下
【アクセサリ (別売り)】
・AC電源コード(日本国内向け OCX100)・専用SDカード (AFM700 /4G・/32G)
NETIMPRESS avant/acorde 共通アクセサリ製品仕様
●専用SDカード(AFM700)
AFX100/AFX210製品向けの専用SDカードです。
高速データアクセスの最大32GBのメモリサイズ(UHS-1規格)まで対応しています。
プログラミング環境データは、従来品同様にYIMフォルダに保存されます。プログラミングの活用では、YIMフォルダを瞬時に切り替えて次の対象マイコンに変更することが可能です。
●ライセンス(定義体)
NETIMPRESS avant/acordeは汎用のフラッシュプログラマです。各社フラッシュプログラミングプロトコルに対して定義体(通信用ファームウェア)ならびにプローブロジック(物理インターフェースに対応するロジックファームウェア)をライセンス提供しております。SDカードにライセンスを追加することで対応デバイスを拡張することが可能です。
●プローブケーブル(PHX400/PHX410)
PHX400は様々なインターフェースに対応するマルチインターフェース対応プローブケーブルです。
初期設定でシリアル、SPIを標準対応し、プローブロジックライセンスを追加することで対応インターフェースを拡張することができます。
PHX410はCAN/CANFD用プローブケーブルです。 自動車などのECU生産ラインの最終工程(EOL:End-of-Line)で行われる一部のデータ書き換えなどにご利用頂けます。
【基本仕様】
・ケーブル長:
プログラマ側 2m/ターゲット側 30cm
・接続コネクタ
プログラマ側 丸形コネクタ 8pin
ターゲット側 D-SUBコネクタ
(PHX400:25pin・PHX410:9pin)
・外形寸法 65(W)×95(D)×25(H)mm
【プローブロジックライセンス】
プローブロジック(物理インターフェースに対応するファームウェア)をライセンス提供しております。
ライセンスをご購入プローブにインストールすることでプローブインターフェースへ対応することが可能です。
・PLX410 : シリアル プローブロジックライセンス( PHX400 に標準インストール済みです)
・PLX420 : JTAG プローブロジックライセンス(有償) PHX400 用
・PLX430 : SWD プローブロジックライセンス (有償) PHX400 用
・PLX440 : QSPI プローブロジックライセンス (有償) PHX400 用
・PLX460:BDM プローブロジックライセンス (有償) PHX400 用
・PLX450 : CAN/CANFD プローブロジックライセンス (PHX410 に標準インストール済みです)
CAN/CAN FDリプログラミング対応のサポート
リプログラミング(再書き込み)は、マイコンのリセット後にユーザ動作モード(※)状態で動作している際に、外部ツールからの要求によりフラッシュメモリの特定エリアを書き換える動作です。用途は、開発・製造・サポートにおいてデータのチューニングや製造出荷時のデータ付加(EOL)、アプリケーションソフトのアップデートなどに用いられます。
リプログラミングのツールは、車載ECUアプリケーションではCAN/CAN FD通信を用いたプログラミングツールが代表的です。リプログラムを実現するためには、プログラマツールとマイコンをCAN/CAN FD通信経由で中継するためのブートローダーが必要です。プログラマツールとの中継可能な状態から、フラッシュプログラミングのための制御プロトコルが動作するソフトウェアによってフラッシュメモリの書き換えを実現します。
弊社プログラミング環境をお客様が活用するために、各種のCAN/CAN FDプロトコル対応からマイコンのブートローダー・プログラミング制御などのカスタム開発を多数手がけております。また、弊社オリジナルのCAN/CAN FDプロトコル(UCOP)の提供も可能です。
UCOPの動作イメージを以下に紹介します。
ブートローダー(IBL)経由で、ツールからプログラミング制御ソフトウェア(WCP)をマイコンの内蔵RAMに転送を行い、転送した制御ソフトウェアを起動させてリプログラミングを行います。リプログラム動作完了後にマイコンをリセットすることでソフトウェアのアップデートは完了します。
※ユーザ動作モードは、「フラシュマイコンプログラマ」WEBページの「フラッシュマイコンの書き込み方法とは」を参照ください。
NETIMPRESS avant/acorde 共通製品仕様
プログラミングスピード・ファイルダウンロード性能の高速化
高速プログラミング実現の為、ターゲット通信ボーレート、PC通信ボーレートならび内部処理を高速化しています。
ターゲットとの通信ボーレートは最大40Mbps、PCとの通信はGigabit Ethernetで接続され8Mbyteのバイナリファイルを6秒でダウンロードすることが可能です。
プログラミング時間比較
デバイス | 容量 | プログラミングI/F | コマンド | AF430 従来モデル |
AFX100/AFX210 新モデル |
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デバイスA | 4Mbyte | シリアル | EPR | 48秒 | 34秒 |
デバイスB | 16Mbyte | JTAG | EPR | 94秒 | 74秒 |
EPR:Erase(消去)・Program(書き込み)・ReadVerify(ベリファイチェック)の一連動作